奈良県内外に走る8つの活断層 大地震に備えて、日頃の準備重要
巨大地震や災害は、いつどこで起こるかわからない。県とその周辺には8つの活断層が通っているほか、近い将来、南海トラフ巨大地震の発生も予想されている。日ごろの備えはもちろん、いざというときに命を守る行動を取ることができるか。一人一人が防災への意識を持つことが重要だ。この夏、家庭、職場、学校、地域それぞれの場所で、改めて防災対策について考えてほしい。
■震度7の揺れが数十秒
今年4月に発生した熊本地震では、激しい揺れにより倒壊した家屋の下敷きになるなどして49人の死者と1人の行方不明者が出た。避難者は今でも5千人近くに上る。
奈良県でも、こうした災害は決してひとごとではない。平成16年に作成された県の「第2次県地震被害想定調査報告書」によると、県とその周辺には8つの活断層が通っている。そのうち、被害が最大と想定されているのが、京都府城陽市から奈良市、天理市を通り桜井市までの南北約35キロにわたる「奈良盆地東縁断層帯」だ。
この断層帯では、最大震度7から震度5強の揺れが数十秒間続くと予想され、約11万棟の住宅が全壊。死亡者は約5千人、避難者約43万人、断水は約43万世帯に及ぶと想定されている。
今後30年以内の発生確率などを公表している政府の地震調査委員会は、最大確率がおおむね3%以上を「高い」、0・1%以上を「やや高い」と評価しているが、「奈良盆地東縁断層帯」の今後30年間の発生確率は「ほぼ0%~5%」だった。いつ起きてもおかしくないのが現状だ。
■奈良盆地に人口集中で被害甚大に
同じく最大震度7の揺れと想定されているのが、「中央構造線断層帯」だ。大和高田市や橿原市、五條市、斑鳩町など奈良盆地内を中心とする13市町村で激しい揺れが起こり、死者は約4千人、避難者は約39万人に達するとされる。
同委員会によると、今後30年間の発生確率は「ほぼ0~5%」。県防災統括室は「奈良盆地に約9割の人口が集中している県にとって、ひとたび激しい揺れの地震が起きると数千人が犠牲となる恐れがある」と指摘する。
こうした活断層のほかに、南海トラフを震源とする南海トラフ巨大地震も最大で約4万7千棟が全壊し、負傷者は約1万8千人に上るとされるなど県内で大きな被害をもたらすと予想されている。県は「被害が広域にわたるため物流が滞り、食料、飲料水などの物資不足が考えられる」とし、1週間分以上の食料などの確保をすすめている。
■日ごろできることは?
では、具体的に日ごろからできる防災対策としては、どのようなものがあるのか。
室内では、倒れてきた家具の下敷きになったり、落下してきた食器でけがをする人が多い。そのため家具には転倒防止器具をとりつけ、窓にガラス飛散防止フィルムを貼る。部屋の出入り口や廊下、階段には家具を置かず、地震時の出火を防ぐため、火気の周辺には家具を置かないことも大切だ。
また、住宅の耐震化も大きなポイントだ。耐震基準が強化された改正建築基準法施行(昭和56年)以前に建築され、耐震性に不安がある住宅の場合、耐震診断を受け、耐震改修を行うことが必要だ。
ひとたび大きな揺れを感じたら①姿勢を低く②頭を守る③動かない―という3つの基本行動で身を守る。普段から避難経路を確認し、家族の集合場所について事前に決めておくのが望ましい。県防災統括室は「奈良でも激しい直下型の地震が起こる可能性は大きい。日ごろから防災意識を高め、自分の命を守ってほしい」としている。(有川真理)
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