【大麻工場摘発】奈良県警「想像絶する光景」 のどかな集落、住民に衝撃
1万本超もの大量の大麻草が栽培されていた工場が見つかったのは、柿畑に囲まれたのどかな集落の一角だった。販売目的で大麻草を栽培したとして奈良県警が16日、大麻取締法違反(営利目的栽培)の疑いで、指定暴力団東組幹部の木村純一容疑者(54)ら4人を逮捕した事件。工場がある和歌山県かつらぎ町の住民の間には驚きの声が広がった。巨大大麻工場の驚くべき実態とは―。
和歌山県北東部に位置し、世界遺産・高野山からもほど近いかつらぎ町は柿のほか、みかんや梨といった果物の一大産地として名高い。小高い丘陵地にある集落は柿やかんきつ類の畑に囲まれ、民家や農家の倉庫が軒を連ねる。その中で、ひときわ大きな鉄骨2階建ての建物が摘発された大麻工場だ。
現在、工場の扉やシャッターはすべて閉まっており、中の様子をうかがうことはできない。柿畑に隣接しているため、周辺を行き交うのは柿などの果物を運ぶ軽トラックばかり。だが、近隣住民によると、事件発覚前には月に何度も黒塗りの高級車が工場を訪れたり、見慣れない軽乗用車が工場内の駐車スペースに数時間止まっていたりすることがあったという。
車を目撃したことがあるという近所の主婦(71)は、「のどかなまちにこんな工場があるなんて。警察が逮捕してくれたからよかったが、いつまでも暴力団が出入りしていたらと考えるとぞっとする」と話した。
住民らによると、工場はもとは織物工場として使用されていたという。数十年前に倒産し、その後は倉庫などに使われていたが、今夏以降、昼間から工場内で照明がともされるといった、不審な兆候があった。柿農家の男性(68)は、「工場に出入りしていた人たちは目があってもあいさつもなかった」と振り返る。
奈良県警によると、工場内は空調など、大麻の生育環境を整えるためのさまざまな設備が完備されていたという。成長を促すための照明器具も、成長段階に応じて蛍光灯や高圧ナトリウムランプを使い分けるなど、「丁寧に育てていると感じた」(捜査関係者)という。
奈良県警幹部は、「工場内は想像を絶する光景で、捜査員も経験のない数の大麻が並んでいた」と驚く。暴力団の資金源になっていた可能性が高く、販売ルートの解明が急がれる。