東大寺周辺にも宿泊施設 12月1日から規制緩和
外国人を中心とする観光客が急増していることを受け、奈良市は12月から東大寺周辺などで、これまで認めてこなかった宿泊施設の新設を許可する規制緩和を行う。奈良では観光客数に対し、宿泊施設が不足していることが観光振興の足かせになっており、市は「景観保護」の名の下に制限してきた人気観光スポット周辺の活用に踏み切った形だ。
奈良市開発指導課によると、規制緩和の対象地域は、近鉄奈良駅近くの東大寺、興福寺、新薬師寺のほか、近鉄西ノ京駅近くの薬師寺、唐招提寺の計5カ寺周辺。
新設の基準は、延べ面積500平方㍍以内で、2階建てまでの比較的小規模な施設。旅館業法の許可があれば開設を認める。10年以上使われている既存の建物を改装する場合は、基準以上でも増築しなければ許可する方針だという。
対象地域は都市計画法によって市街化が抑制される「市街化調整区域」。これまで市は、一部地域に限って飲食店や土産物屋の設置を許可してきたが、宿泊施設については景観上の配慮から認めてこなかった。だが、建物の持ち主が高齢になって廃業したり、空き家になったりするケースが増え、現在では既存建物や町並みの風化が逆に問題となっている。
奈良市の観光客数は昨年約1500万人を記録し、4年連続で増加した。特に外国人の宿泊客は昨年約22万7千人と、前年から倍増している。一方で、奈良は宿泊施設が全国的にも極めて少ないことで知られ、観光客を積極的に宿泊に結び付けられていないことが課題となっている。
今回規制緩和される地域については、すでに宿泊業界関係者から問い合わせがあるといい、開発指導課は「景観を保護しつつ、観光活性化につなげたい」と話している。