【やまと人巡り】池田和美さん(68) べっ甲細工工、「奈良べっ甲」時代に合わせ
べっ甲細工工として「現代の名工」に選ばれた桜井市の池田和美(雅号・柏藻)さん(68)。自宅横の工房で作務衣を着込んで黙々とべっ甲に美しい模様を彫り込んでいく。「受賞は身が引き締まる思い。もっといい作品を生み出したい」とさらに上を目指す。
父は和菓子職人で、兄は貝彫刻師という職人一家に生まれ育った。16歳から大阪のべっ甲細工師の下で10年間、透かし彫りの技術を学び、昭和49年、大神神社の近くに「池田工房」を作り、独立した。
べっ甲はウミガメの一種タイマイの甲羅を原料としており、上之宮遺跡(桜井市)からは飛鳥時代のものとみられるべっ甲の破片が出土している。正倉院にも「玳瑁如意」が収められるなど奈良との縁は深い。そんなことから「日本のべっ甲は奈良が発祥」との思いで自身の作品を「奈良べっ甲」と名付け、次男の征二さん(36)と二人三脚で各地の百貨店で販売会を開いている。
彫刻に使うカッターは200種類以上で、すべて自作で大きさ、形も様々。伝統工芸を守り続けてきた足跡が道具にも表れている。作品は、以前は和装に合わせたかんざしや髪留めが大半だったが、今はブローチやネックレスなどのアクセサリーも作る。「時代に合わせたもの作りで技術を継承していきたい」と今後も奈良べっ甲の魅力を発信し続ける。 (啓)