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【鹿角抄(コラム)】「春日若宮おん祭」参加が…下関で痛感した凶悪事件の重さ


私の代役で「春日若宮おん祭」に奉仕者として参加した同僚の神田啓晴記者(左)

私の代役で「春日若宮おん祭」に奉仕者として参加した同僚の神田啓晴記者(右)

17日朝。春日大社の摂社・若宮神社(奈良市)の祭典で師走の恒例行事でもある「春日若宮おん祭」に奉仕者として参加する予定だった。奈良らしい文化に触れる機会を前に心を弾ませながら歯を磨いていたところ、携帯電話が鳴った。
「山口に行ってくれ」。7年前に発生し未解決となっていた女子大生殺害事件で、山口県内で事件直後に交通事故死していた当時30代の男が、殺人などの容疑で書類送検されることになったため、その出張取材を命じられた。スーツケースに衣類などを詰め込み、祭りの雰囲気漂う街に後ろ髪を引かれながら、男の出身地である山口県下関市へと向かった。
JR新下関駅で新幹線を下り、車で現地へ。普段はのどかであろう住宅街には、既に多くの報道陣が詰めかけていた。「信じられない」「まじめそうだったのに」|。付近住民は口をそろえ、驚きの表情だった。弟と2人兄弟だったという男。実家は祖父母の代から商売を営んでおり、幼いころの元気良くあいさつする笑顔が印象的だったと聞いた。
事件発生から7年余りが過ぎ、容疑者が死亡していることで「迷宮入り」になる部分も多い。遺族は「犯人が見つかったという安堵感はある」としつつ、「言葉では表現できない怒り、悲しみ、憎しみ、苦しみをぶつける先がありません」などとコメント。どうして、この男が-。男の周辺を取材した記者自身も、この疑問への答えは結局見つけられなかった。
男の弟が実家があった場所に建て直した美容院には、「一身上の都合で閉店することになりました」との貼り紙があった。周囲に聞くと、最近になってから弟家族の姿も見かけられなくなったという。
事件は、たくさんの人々の人生を狂わせてしまう。事件取材、報道にあたるということの〝責任〟を、改めて痛感した。
(森西勇太)

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