【県立美術館企画展 祈りの美 ①】 清水公照 紅富士(べにふじ)
2017年01月26日 産経新聞奈良支局 最新ニュース
清水公照(しみず・こうしょう 1911~1999)は、東大寺別当(住職)を務め、その温かい人柄から「昭和の良寛」と親しまれた宗教家ですが、一方で、独特の味わいを持つ書画、陶芸を制作したことでも知られています。
本作は、青雲たなびく赤富士に「和風被八方(和風八方に被う)」(のどかな風が国の八方へ吹きあまねく及ぶ)という一文を記したもの。天下泰平の世を祝う晴れやかな気分に満ちた作品です。力強く大胆な画面からは、手近に筆がなければバケツの墨と雑巾の筆で描いたという豪快な創作態度もうかがえます。赤富士は、富士山が朝日に染まって起こる現象で、一般に縁起の良い事とされており、古くから画題とされてきました。 (県立美術館学芸課 松川綾子)
「祈りの美~清水公照、平山郁夫、杉本健吉…」は、奈良にゆかりの深い3人の作家の作品を展示し、三者三様の表現世界を鑑賞していただくと同時に、作品の根底に流れる祈りの心や奈良の歴史・文化の魅力を感じ取っていただこうという企画展です。いくつかの作品を順次紹介します。3月15日(水)まで開催中。