【県立美術館企画展 祈りの美 ②】清水公照 泥仏(どろぼとけ) 釈迦十大弟子(しゃかじゅうだいでし)のうち 優波離(うばり)
2017年01月26日 産経新聞奈良支局 最新ニュース
宗教家である清水公照が創作活動を展開するきっかけとなったのが、「泥仏」と称する焼物の人形作りです。作者は52歳の時に東大寺幼稚園の園長を務めることになりますが、そこで園児たちが自由に紙粘土で遊んでいるのを目にし、その躍動感溢れる表現に触発されて、自らも陶土を使った手びねりによる人形作りを始めました。
幼少期に見た五百羅漢(らかん)やインドの人々の風貌などの記憶を頼りに制作したという泥仏は、「仏」とはいうものの表情豊かで人間味溢れる姿・形をしています。作者は、「泥仏を作る時間はどろどろの泥をはく時間だった」と語っていますが、泥仏作りは自身の内面と向き合う日課となってゆきました。
本作は釈迦の10人の高弟のうちの1人「優波離」を象ったもの。生涯1万点あまりもの作品を生み出したという泥仏は、作者の自画像であると同時に、作者の関わったさまざまな人々の姿が投影されています。 (県立美術館学芸課 松川綾子)