【県立美術館企画展 祈りの美 ③】 清水公照 麗人
2017年01月27日 産経新聞奈良支局 最新ニュース
飛天や麗人といった独特の女神像も作者の作品におなじみのモチーフです。鮮やかな衣装をまとって宙を舞い、微笑みを浮かべるその風貌は愛嬌たっぷりですが、そのかたわらには「華厳経」や「阿弥陀経」などの経文や人生を歌った「いろは歌」、自然界を賛美する漢詩などの文字や詩句が添えられています。
作者はしばしば「華で飾られた仏の教え」とされる「華厳経」を世界や人生にたとえ、作品には常に華厳の教えにもとづく独自の世界観が表現されています。とりどりの色彩で描かれた女神たちは仏の化身となってその教えを体現しながら、書画一体となった作者の表現世界に彩りを添えています。
画中の漢詩は、中国・唐時代の詩人・盧照鄰(ろしょうりん)による「長安古意」の一文です。唐の都・長安の繁栄を詠んだ歌ですが、その真意は世の無常をよそに孤高の生活を送る人々を讃えることにあります。花の精のような麗人たちが一時の栄華を象徴しているかのようです。 (県立美術館学芸課 松川綾子)