【祈りの美 ④】 清水公照 書「自分にな」 人柄、人生観わかる作品
2017年01月31日 産経新聞奈良支局 最新ニュース
作者にとって書は創作活動以前に宗教家として必要とされる素養の一つでしたが、本格的に書を学んだのは応召でわたった中国で漢字の文化に肌で触れたことがきっかけだったそうです。中国・唐時代の書家の作品を手本に楷書体や草書体を学び、寺門の扁額や茶掛けにとさまざまな書体を重ねるうちに、おおらかで奔放ともいえる独自の書風を身につけてゆきました。
「自分にな 一、なまけるな 一、おこるな 一、いばるな 一、あせるな 一、くさるな 一、おごるな 右條々自戒自守 別当公照」
と柔らかな文字を書き連ねた本作は「泥仏放語百カ条」と題した作者の100の信条を締めくくる自戒の言葉を表したものです。もともと依頼により書いた6カ条に押しつけがましく感じられたため、「自分にな」という表題を付けてできたといいます。「昭和の良寛」と親しまれた作者のあたたかな人柄とともにおおらかな人生観が読み取れる作品です。 (県立美術館学芸課 松川綾子)