【祈りの美 ⑥】清水公照 鶴の図 「線の交錯」鮮やかに
2017年02月2日 産経新聞奈良支局 最新ニュース
作者は「泥仏」から派生した釈迦や十大弟子、羅漢といった伝統的な宗教画題とされるものから、還暦(60歳)を契機に始めた「絵日記」に登場するような四季折々の風物を主題としたものまでさまざまな画題で絵を描いています。軽妙な筆さばきを見せる「鶴図」も作者おなじみの主題の一つです。
墨のにじみや濃淡を利用した「付け立て」と呼ばれる運筆技法を生かして鶴を表現していますが、作者はこれを「線の交錯」と捉えて、筆ならしのために頻繁に描いていたそうです。
古来「鶴」は長寿を示す吉祥図案としてよく画題とされてきました。画中の「松影迎福」「松寿千年」という言葉も常緑樹の松葉が千年という長い歳月を経ても風雪に耐えその色を変えることのない長寿を表すものとして記されており、本作は吉祥づくしのおめでたい作品となっています。 (県立美術館学芸課 松川綾子)