【鹿角抄(コラム)】 「好きなことに打ち込む」「輝く人」 発掘して、元気にできる記事を
事件取材を担当していると、日々の帰宅は遅い。いつものように夜もすっかり更けた時間に帰宅したある日。暗くて寒い部屋は、冷え切った体だけでなく、精神面にも多少のダメージを与えてくる。
そんな独身生活の味方・カップラーメンに、いつものように沸かした湯を注ぎ、割りばしで麺をすすりながらテレビのチャンネルを回していたとき。ふと、ある映像に目を奪われ、リモコンを操作する手が止まった。奈良市の少年サッカー大会の放送だった。
保護者が懸命に応援する中、学校のグラウンドで子供たちは白い息を吐き、細い体を泥だらけにしながら、ゴールに向かって一生懸命にボールを追いかけていた。
記者自身も、サッカー少年だった。今はカップラーメンばかり食べているが、当時は食にも気を配り、部活に打ち込んでいた。サッカーに夢中だった昔の自分をテレビで見た少年たちの姿に重ねると、懐かしい思い出に浸れた。そして、少し温まった思いで眠りについた。
先日、2012年のロンドン五輪・アーチェリー競技個人戦で銀メダルを獲得した古川高晴選手(32)=近畿大職員=を取材する機会があった。中学生の前で講演した古川選手は、自分のモットーを「好きこそものの上手なれ」だと話してくれた。世界の大舞台での経験から話してくれた講演は「なるほど」「その通りだ」と思わされることが多々あり、生徒にとっても間違いなく糧になったことだろう。
どんな分野でも、何かに真剣に取り組む人の姿には、他人を感動させる力があると信じている。取材を通じて出会うそうした人たちには、「何かおもしろいな」と感じさせられることが多い。テレビで見たサッカー少年のおかげで温まったのも、同じことだろうと思う。
古川選手が話していたように、「『本当に』好きなことを見つけて打ち込む」ことを、講演を聞いた子供たちには期待している。そして、私も「輝く人」を発掘して、誰かを元気にできる記事を書いていきたい。
(森西勇太)