【榊莫山と紫舟のシンフォニー⑦】榊莫山 「天平ノ首飾リ Ⅱ」 女性・母性に対する憧れうかがえる
2017年04月27日 産経新聞奈良支局 最新ニュース
ハコネウツギヲ古イ百濟(くだら)ノ壷ニイケ 遠イ天平ノ首飾リヲ想フ
榊莫山はこの女性像について、京都・浄瑠璃寺の吉祥天像をモデルにしたと記しています。浄瑠璃寺の吉祥天像は鎌倉前期の復古的な作品とされる木彫像で、美しい顔立ちや華麗な服装によって知られています。
同じ主題の作品を見た人から「美しすぎる。もうちょっとやんちゃで、いたずらっぽいのを、見たい」と言われた榊は、いたずらっぽい女性像にいどみ続けたとも記していますが、掲載の作品も美しさと愛嬌を併せ持つ一点です。揺れる輪郭線、髪や衣服に置かれた墨のむら、単純化された目鼻・装身具には、筆者の遊び心が感じられます。
このように、今回の展覧会では女性を主題とする榊の作品も展示しています。表現が異なる2点の「天平ノ首飾リ」、墨画の裸体画に詩的なフレーズを書き添えた作品、漢字「女」を書いた書、「母」を造形化して陶板に刻んだ作品から、女性・母性に対する榊の憧れがうかがわれます。(県立美術館学芸課 稲畑ルミ子)