【やまと人巡り】 朗読劇「みつめればそこに」脚本・演出 小栗一紅さん(47) 「入江泰吉の半生、丁寧に描く」
10月9日に奈良県立図書情報館で開催される朗読劇「みつめればそこに」(大阪ガス主催)の脚本・演出を手がけた劇作家、小栗一紅(おぐり・かずえ)さん(47)は、「写真家・入江泰吉(たいきち)の半生を描いた。観劇後、入江の撮った写真を見てもらうと、その写真に込められた祈りのようなものが浮かび上がってくる」と自信をもってPRする。
奈良出身の入江泰吉(1905~1992年)は昭和20年に大阪大空襲に遭い、奈良に引き上げた。以後40年以上にわたって奈良を撮り続けた。
小栗さんは入江の自伝をもとにして、86歳で亡くなるまでを80分間の朗読劇に凝縮。40歳からの〝生き直し〟を、地域、友人、奈良の地とのつながりとともに丁寧に描いている。「入江はお金や地位を目指したのではなく、自分を無にして後世に写真を残すという使命感で撮り続けた。その心意気がだんだんわかってきて、心打たれた」。本番が楽しみだ。
今でこそ劇作家だが、もともと小栗さんは役者だった。大阪芸大卒業後、劇団の作家がいなくなり、書かざるを得なくなった。30歳だった。
当初は頭の中の空想を書いていたが、最近は自伝を読んだり、取材をして、演出する。次作は戦中、米国で機関士をしていた日本人を描く予定。「史実に基づいて、あまりスポットライトの当たっていない日本人を描いていきたい」という。今回の入江を描いた「みつめればそこに」同様に素晴らしい劇が期待される。 (吉)
■朗読公演「みつめればそこに」
10月9日(月・祝)午前11時、午後3時の2回。朗読劇(80分)のほか秘蔵写真が映し出されるプロローグ(15分)やアフタートーク(20分)もある。会場は奈良県立図書情報館(奈良市大安寺西1―1000)交流ホール。定員は各回200人で予約が必要(先着順)。料金1000円。問い合わせは奈良県立図書情報館(☎0742・34・2111)。