【鹿角抄(コラム)】 政策重視の「政権選択」を 衆院選、22日に投開票
平成21年8月、まるで熱に浮かされていたかのような、あの夏を思い出す。「政治が変われば日本が変わる」。目に見えぬ閉塞感の中で、たしかにそんな高揚感があった。新聞に踊る「政権選択選挙」の文字は当時と同じだが、体感温度は随分違う。
民主党(当時)による政権交代が実現したあの選挙で、私は千葉県内の選挙担当記者として、県内全13選挙区を毎日朝から晩まで走り回っていた。大阪に隣接する奈良と同様に、東京に隣接する千葉は無党派層の多い都市部と、保守地盤が強固な農漁村部が混在していた。「小泉旋風」が吹き荒れた平成17年の衆院選では12選挙区で自民党が大勝。だが、21年の衆院選で勢力図は一変。11選挙区で民主が圧勝するという、劇的な展開だった。
選挙期間中、各候補の街頭演説は聞けば聞くほどおもしろかった。自民が「日本を守る」と訴えれば、民主は「日本を変える」と応酬した。「変化」への欲求が高まっていた時期だけに、その分かりやすい対立の構図は有権者の興味を大いに引いた。
翻って今回の衆院選。構図が非常にわかりにくい。全国的には「自公VS希望・維新VS左派共闘」の「3極対決」と言われるが、奈良では同じ選挙区で希望と維新が火花を散らし、立憲民主の候補もいない。いずれかの政党に、いわゆる「風」が吹いている様子もない。はてさて何を基準に投票しようか。
こういう状況だからこそ、有権者はじっくりと各候補の政策を比べ、未来を託すに足る人物か、政党かを冷静に見極めてほしい。ちょうど、紙面では17日から候補者アンケートが始まっている。街中では候補者が政策の訴えに声をからしている。実際に会えば、話し方や目線、握手の仕方から、人柄も透けてみえるはずだ。
投開票日までは雨が多いという週間天気予報が気になるが、多くの人が投票所に足を運び、重みのある1票を投じてくれることを期待している。 (田中佐和)