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【奈良県立美術館特別展 没後40年 幻の画家 不染鉄⑥】 「芸術とは心を映す鏡である」 真摯に向き合った生涯たどる


晩年の不染鉄

晩年の不染鉄

奈良県立美術館に先行して開かれた東京ステーションギャラリーでの「不染鉄展」では、「なぜこれほどの画力と表現力を持った画家が埋もれたままだったのか」と驚嘆の声が上がった。不染鉄とはどのような人物で、なぜ評価が遅れたのか。改めて不染鉄の生涯をたどる。
明治24(1891)年、東京・小石川で生まれた。父親は僧侶だったが、当時、妻帯を認められなかったこともあり、いささか複雑な境遇の中で育てられたようである。成長し、宗門の中学に入学するも素行の悪さから放校となるなど地元では名の知れた不良少年だった。
中学を卒業すると父親の跡を継がず、気ままに暮らせるとの理由から絵描きの道を選び、日本画家・山田敬中の門下生となる。この間の詳細はいまだ不明。だが、両親を亡くして覚悟を決め、23歳の時に日本美術院の研究会員となり本格的に絵の勉強を始めた。しかし、一人暮らしからくる寂しさや将来への不安などで次第に自信を失い、この頃知り合った妻とともに現実から逃れるように伊豆大島へと渡った。温暖な気候風土とあんこ椿で知られる独特の風俗から画家たちの逗留地としても知られた大島。結局3年もの間、漁師のまねごとをしながら同地に滞在することとなった。
しかし、絵描きへの思いは募るばかりだったのか、思い立って京都へ移り、大正7(1918)年、京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に入学。成績優秀で特待生に選ばれて首席で卒業。在学中には帝国美術院展覧会(帝展)で初入選を果たし、以後9回にわたり入選を重ねるなど画壇に認められる。
一方、日本画家の上村松篁(しょうこう)との交流が知られるように、年若い友人とスケッチに出かけたり演劇に興じたりと一時の青春時代を送った。
昭和2(1927)年頃に奈良・西ノ京に住まいを移し、《思出之記》(個人蔵)などの帝展出品作を制作。画家として充実した日々を送る。2年あまりと短い期間ではあったが薬師寺や唐招提寺といった古刹が点在し、秋篠川から赤膚山へと農村地帯が広がる鄙びた佇まいに心惹かれ、何度となくその風景を絵にしたためている。また、この頃に僧籍も取得したようである。しかし、いつしかこの地も後にし、昭和7(1932)年には東京・江戸川の地に住まいを移している。
生涯住まいを転々としたが、戦前・戦時中の東京でも理解ある人の助けを借りて生活していたようだ。一方の創作活動はといえば、帝展から新文展へと組織が移行した昭和10年代頃から徐々に画壇と疎遠になり、絵描きもままならない時代へと突入する。この間も作画は続けていたが、戦災で失われた作品も少なくはないようだ。

京都市立絵画専門学校時代。右下が不染、中段が上村

京都市立絵画専門学校時代。右下が不染、中段が上村

昭和21(1946)年、戦前に図画の教師を務めたことのある奈良県正強中学校(現在の奈良大学付属高校)の理事長兼校長に雇われ、後半生を奈良で過ごすことになった。教育者としての理想に燃えるものの、戦後の混乱の中での学校経営は容易ではなく、昭和27(1952)年、志半ばで職を退く。その後は一時政治にも関心を向け、政治家への転身も考えるがこれも果たせず。昭和33(1958)年には長年連れ添った妻を亡くしている。
天涯孤独となったが昭和30年代後半頃からは奈良公園近くの屋敷の隅にあばら屋を立ててもらって生活を始めた。この住まい兼アトリエには作品や人柄を慕う人々が集うようになり、晩年はこうした人々との温かな交流を育みながら、穏やかな日々を送った。絵画への思いは衰えぬまま、昭和51(1976)年、直腸がんのため84年の生涯を終えた。
時代の荒波に抗うこともなければ流されることもなく、ただ自らの思うまま自由に生きた。中央画壇から離れ、時には野心も見せた奈良での後半生は芸術家としての評価の妨げになったかもしれない。しかし、「芸術とは心を映す鏡である」と親しい人に宛てた絵葉書に書き綴ったように、芸術と真摯に向き合い続けた真の画家であったことは残された作品が何よりも雄弁に物語っている。   (奈良県立美術館学芸課 松川綾子)

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