【鹿角抄(コラム)】 平城宮跡の「おもてなし力」 朱雀門ひろばが3月24日オープン
奈良県のマスコットキャラクターとしてすっかりおなじみになった「せんとくん」が今月〝10歳〟になった。誕生当初は独特の風貌から「気持ち悪い」などと酷評された彼だったが、逆風に耐えて実にたくましく成長した。今や知らぬ人はいない、奈良の人気者だ。
せんとくんはその名が示す通り、「平城遷都1300年祭」(平成22年開催)の公式マスコットとして誕生した。久しぶりに1300年祭のことを思い出したが、懐かしい。私も会期中の7月に家族と観光で平城宮跡を訪れ、せんとくんと一緒に「合掌」ポーズで写真を撮った。いい思い出だ。
というのは余談で、あの日なにより印象的だったのは、観光地としての平城宮跡の「おもてなし力」の低さだったように思う。大極殿院や遣唐使船は間近でみると美しく、見応えがあった。ただ、広大な会場にぽつぽつと点在するそれらを見て歩くには、炎天下の中を延々歩くしかなかった。落ち着いて座れる休憩スペースもなく、80代の祖母が随分つらそうだったのを思い出す。
だが、あれから8年。ついに平城宮跡がおもてなし力を発揮しようとしている。平城宮跡の正面玄関として3月24日にオープンする「朱雀門ひろば」がそれだ。
朱雀門と大宮通りの間に広がる朱雀門ひろばには、展望デッキ付きの休憩施設や歴史展示施設が新設され、池には復元遣唐使船が浮かぶ。そしてなにより重要なのは、これまでなかったレストランやカフェができることだろう。これにより、平城宮跡はようやく観光客を受け入れるための最低限の設備を備えることになる。それは成熟した世界遺産への新たな一歩となるはずだ。
完成したら、90歳になった祖母を8年ぶりに連れて行こうか。建物の内装や料理の味…実際にどんな施設ができるのか、個人的にも完成を楽しみにしている。朱雀門ひろばの中身についてはまた後日、紙面で詳しく紹介しようと思う。 (田中佐和)