【奈良のシカ】 鹿せんべい、じらさないで トラブル続出で、鹿せんべい販売所に〝正しい与え方〟の看板
奈良公園(奈良市)のシカに鹿せんべいを与える際に、じらすなどして攻撃される外国人観光客が増えていることを受け、奈良県などは3日、鹿せんべいの正しい与え方を英語、中国語、日本語で記した看板を公園内の鹿せんべい販売所に設置した。購入前に注意点を確認してもらうことで、トラブルを減らしたい考えだ。
県によると、外国人観光客の増加で、人とシカとのトラブルは年々増えているという。シカにかまれたり突かれたりしてけがをする「人身事故」は平成25年度は50件だったが、28年度には118件に倍増。29年度は180件と過去最多となった。被害者は外国人が77・1%と大半で、国別では中国人が114件と抜きんでていた。事故の主な原因が鹿せんべいの誤った与え方で、写真などを撮ろうとじらしてシカを怒らせ、手や腹をかまれるケースが多いという。
こうした被害を防ぐため、県などが今回設置したのが「鹿からのおねがい」看板だ。奈良公園内には、野生動物であるシカと触れ合うときの注意事項を記した看板はこれまでもあったが、鹿せんべいの与え方に特化した啓発が必要と判断したという。看板では、「じらさずにすぐちょうだい!」「鹿せんべいがなくなったら両手をひろげておしえて!」など、注意点が分かりやすくイラスト付きで表記されている。
鹿せんべい販売所で働く女性(68)は、「外国のマナーの悪い人には英単語やジェスチャーを使って注意するけれど、理解してもらえず、かえってもめることも多い。看板の効果に期待したい」と話した。
台湾から20人以上のツアー客を連れて奈良を訪れたガイドの林盛清(リンセイセイ)さん(65)は、「みんなシカに鹿せんべいをあげて遊ぶのを楽しみにしている。かまれることはたまにあるから看板はいいが、もう少し文字を大きくしないと読みにくい」と注文を付けた。