【やまと人巡り】唐古・鍵遺跡をすべて知る男 田原本町埋蔵文化財センター長、藤田三郎さん(60)
約40年間、全国最大級の環濠集落跡とされる唐古・鍵遺跡(約42万平方㍍)の調査に携わった田原本町埋蔵文化財センター長の藤田三郎さん(60)。遺跡のすべてを知る生き字引的存在。その遺跡の中心部約10万平方㍍が4月17日、史跡公園に生まれ変わった。
「町にとっても念願の史跡公園。第3次調査(昭和52年)から発掘調査を行ってきたので、こうした公園に生まれ変わり、隔世の感がある。みなさんに楽しんでもらえる公園で、これからが遺跡の第2ステージ。どんどん使ってもらって、新たな価値を生み出していきたい」
唐古・鍵遺跡ではこれまでに数多くの弥生の画期的発見があった。その中で象徴的なものが遺跡のシンボルとして復元されている楼閣(高さ12・5㍍)のもとになった平成3年の絵画土器の発見。町立北小学校のプール建設予定地の調査で見つかった。
「発掘調査で最初にあの土器を見たときは『こんな絵画土器があるのか』という感じだった。いろんな研究者にその意義を聞く中で、じわじわとすごい土器だということがわかってきた。これまでにない土器だった」と振り返る。
昨年、楼閣を描いた第2の絵画土器が発見され、遺跡には2つの楼閣が建っていた可能性が出ている。
「第2の絵画土器は『最初の土器とは違う』というのが実感。楼閣のルーツがどこにあるのか―など、あの絵画土器の位置付けをもう少しきっちりと行っていきたい」
田原本町出身で、同志社大学大学院修了。森浩一教授に師事し、大学2年のときから橿原考古学研究所の調査に参加して唐古・鍵遺跡を発掘。昭和57年に町役場に就職後も遺跡の調査に携わった。今年3月、町教委文化財保存課長で退職したが、再任用されて同課主幹に就任。町埋蔵文化財センター長や唐古・鍵考古学ミュージアムチーフプロデューサーも務める。
史跡公園については「弥生時代を再現した公園で、当時の景観を楽しんでもらえる。弥生の生活体験もできる」とPR。一方で、現在、町教委の収蔵庫にはこれまでに遺跡から出土した未整理の膨大な遺物が保管され、その整理が大きな課題。「これからも出土品をコツコツと整理して再評価し、現在の研究レベルで唐古・鍵遺跡を学術的に位置付けていきたい」と話している。 (宮)