【鹿角抄(コラム)】鹿ノ台の奮闘を取材して感じたこと (石橋明日佳)
先輩記者の異動に伴う配置替えで今月、1年ぶりに県警担当に復帰した。生駒市や大和郡山市など3市7町1村が持ち場だったこの1年を振り返ると、担当する地域が多いだけに移動は大変だったが、記事にしたいネタは豊富でさまざまな経験ができた。とりわけ興味深かったのは、住民による特色豊かな活動だ。
先日、生駒市北部のニュータウン、鹿ノ台の取り組みを連載するため、取材を重ねた。地域の高齢化率は約40%と市内トップでありながら、街を「オールドタウン」にさせまいと緻密な自治会体制を確立。ありとあらゆることを住民主導でやってのける、驚くべき地域だった。
昔に比べ、近所づきあいが希薄になった現代社会。自宅の両隣にどんな人が住んでいるのか、知らない人も珍しくはないだろう。それを思うと、約7千人の住民のうち約9割が何らかの自治会活動に参加し、街をより良くすべく連携、協力している事実には驚きを隠せない。
道路整備や緑地活動、防犯カメラの設置、通学路の見守り活動、お年寄りの送迎サポート―と挙げればきりがない。住民はこれらを行政や業者の力を借りずに自らの手で担う。その財源も、資源ごみを回収するなどして確保しているという徹底ぶりだ。
取材を進めながら、「この街は一つの自治体に匹敵する」と強く実感した。行政の手が行き届かない〝かゆい所〟まで、自治会が手厚くカバーしてくれるのだから、恩恵を受ける住民にとってはありがたい。
「高齢化によって、街が衰退するわけではない。今後も元気で楽しく過ごせる仕掛け作りをして、地域力を向上していきたい」。鹿ノ台自治連合会の井上善夫顧問(79)の言葉が印象に残っている。そこにあるのは、ひとえに「地域愛」に他ならない。
1年間、行政を担当して得た経験や人とのつながりは、かけがえのないものになった。それを財産に新たな出会いを期待し、今後も取材に邁進したい。