【ニュータウン新時代 生駒・鹿ノ台自治会の奮闘㊦】 世代超え交流、支え合う街
幼子を連れた母親たちが育児談義にふけっている傍らで、お年寄りたちが和気あいあいとコーヒーをすする。放課後になれば、卓球台の周りで歓声を上げる小中学生の姿も。地域の老若男女が世代を超えて集う〝憩いの場〟は、今の時代には珍しい。
鹿ノ台の中心地にある自治会館「いきいきホール」。平成27年、数千万円の自治会費を投じ、旧鹿ノ台消防署をリノベーションして開設した施設だ。
運営しているのは「いきいきホール委員会」。1階の喫茶スペースでは、約75人のメンバーが月水金の週3回、持ち回りでコーヒーとお菓子のセット(計150円)などを提供している。ボランティアで接客に携わっている井上光子さん(71)は「今まで知らなかった地域の人とも交流するようになった。(いきいきホールは)生活の一部になっている」。コーヒーの売り上げは開設から2年半で1万5千杯、225万円にも上る。
絵本やおもちゃを完備した隣のキッズスペースは子育て世代に重宝され、広々とした会議室などがある2階では、コンサートや体操教室などさまざまな活動を展開。ホールは常ににぎわいを見せている。
改修に当たっては、その先行きを懸念する住民も少なくなかった。「高齢者だけが利用して、若者は集まってこないのでは…」。ふたを開けてみれば、予想を上回る盛況ぶり。心配は杞憂に終わった。
地域住民の健康増進を後押しする取り組みも見逃せない。代表例の一つが、高齢者の送迎サポートだ。
丘陵を切り開き、自然の地形を生かして造成された鹿ノ台は、一帯がなだらかな傾斜地になっている。ゆえに、足腰が不自由な高齢者にとっては出歩くのが億劫になる。そこで、住民がマイカーを持ち出し、高齢者を目当ての病院やスーパーまでマイカーで無料送迎しているのだ。
平成26年に発足した「鹿ノ台いきいき街づくり会」のメンバーが週に1回、高齢者の希望に添って実施。2~3年前から、93歳の母とサービスを利用している安部武康さん(69)は「自分も高齢になり、母が老人会の会合などで出かける際に送り迎えをするのが困難になった。とても助かるサービスで、感謝してもしきれない」と喜ぶ。現在は約20世帯がサービスを利用しており、需要はますます高まっている。
住民が知恵を持ち寄り、試行錯誤を重ねて導入に至った施策の数々。鹿ノ台自治連合会の井上善夫顧問(79)は「高齢化によって、街が衰退するわけではない。今後もいろんな世代が元気で楽しく過ごせる仕掛け作りをして、地域力を向上していきたい」。
少子高齢化と人口減の問題が避けて通れない各地のニュータウン。目指すべき将来像がここにある。 (この連載は石橋明日佳が担当しました)