奈良伊賀地域で産経新聞の購読試読・求人案内。

産経新聞 奈良県伊賀地区専売会産経新聞 奈良県伊賀地区専売会

産経新聞グループ各紙のご購読はこちら 0742-24-2214

専売会について専売会について各専売店の紹介各専売店の紹介地域貢献地域貢献求人内容求人内容購読・試読サービス購読・試読サービス

sanbai-02.jpg

【横田洋傘店の閉店】 傘一筋 こだわり全う 横田さん夫婦「苦労してよかった」


夫婦二人三脚で「一生もの」の傘を作り続けた横田仁史さん(左)と妻の千枝子さん

情緒あふれる街並みを今に残す奈良市高畑町の一角で、戦後70年にわたって営業を続けてきた「横田洋傘店」がこの春、惜しまれながら店を閉じた。4代目の横田仁史さん(86)と妻、千枝子さん(79)が「一生もの」の傘を長年作ってきたが、こだわっていた日本製素材の入手が困難に。さらに後継者不在の事情も相まって、やむなく閉店を決めた。仁史さんは「お客さまから手紙をいただいたり、形見の着物で作った傘を涙を流しながら喜んでもらえたり。仕事は大変だったけれど、そんなときは苦労してよかったと思ったよ」と感慨をにじませた。   (竹谷朋美)
横田洋傘店は明治時代、仁史さんの曾祖父が大阪・心斎橋で創業。先代の父、敬太郎さんは昭和初期に台湾へ渡り、「朝日洋傘店」の屋号で事業拡大に成功した。終戦を機に帰国した一家は橿原市にあった母の生家の離れを借り、家族で洋傘製造を再開。昭和23年に現在地に移転した。
台湾で生まれた仁史さんは昭和36年、千枝子さんと見合い結婚。和裁の心得があり、手先が器用だった千枝子さんも作業を支え、最盛期の昭和40~50年代には週に最大130本もの傘を製作したという。
かつては旅館や学校の傘のほか、ビニール傘やジャンプ傘に至るまであらゆる種類の傘を手がけたが、最終的に追求したのは「一生もの」の傘作りだ。
「傘で最も大切な心棒(シャフト)には硬くて丈夫なカシの木、骨が密集するろくろには真鍮、持ち手にはツバキやサクラの木を使った。使っているうちにツヤが出てくるんですよ」(仁史さん)
人気商品となったのは、世界に二つとない「オリジナル傘」。愛着がある着物や刺繍を施した生地を持ち込んでもらい、傘に仕立て上げると、いぶし銀の仕事ぶりが口コミで評判を呼んだ。「うちの傘を差している人を見つけると、うれしくなる」と仁史さん。「違い」をすぐさま見抜くのは一流の職人のなせる技だ。
奈良市内で刺繍教室を主宰する吉川正美さん(76)は、夫婦が仕立てた傘の40年近い愛用者。「自分で刺繍した生地を雨傘にしてもらえたのは横田さんだけ。これからは一層大切に使っていかないと」
30年の付き合いがあるという「ギャラリー禅」(奈良市学園北)のオーナー、富田幸代さん(71)は「8年使っている日傘は、持ち手がサクラの天然木でピカピカ。12本の骨組みなので、畳むとスリムで格好いいんですよ」とほれ込む。それだけに「本当に寂しい」と閉店を惜しんだ。
近年は中国製やプラスッチックが主流になり、材料を日本製だけでまかなうのは難しくなった。後継者もおらず、材料が底を尽きれば引退しようと数年前に決断。5月18日、最後の1本を仕上げて店を閉じた。
仁史さんが熟練の技術で生地を裁断し、千枝子さんが縫う。一本一本に丹精を込め、二人三脚で傘を作り続けて半世紀が過ぎた。
「責任ある仕事でしたが、お客さまに温かい心をいただき、感謝ばかりです」と千枝子さん。仁史さんは「夫婦のどちらが欠けてもできなかった。家庭でも仕事でも、縁の下の力持ちだった家内には感謝、感謝です」と長年連れ添った愛妻に優しいまなざしを向けた。

求人情報求人情報
購読・試読のお申込み購読・試読のお申込み
お問い合わせお問い合わせ

産経新聞各紙
産経新聞産経新聞
サンスポサンスポ
Business iBusiness i
夕刊フジ夕刊フジ

グループ各紙
月刊TVnavi月刊TVnavi
MOSTLYMOSTLY
正論正論
週刊ギャロップ週刊ギャロップ

産経でんき産経でんき


読もうよ新聞読もうよ新聞

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。