【大阪北部地震】 奈良でも震度5弱 交通まひ、国宝にも被害 土砂災害、県が注意呼びかけ
18日午前、最大震度6弱を観測した大阪北部地震。朝の通勤、通学ラッシュを直撃し、国宝や重文指定の文化財が被害を受けるなど、県内にも大きな影響を及ぼした。県や各自治体は相次いで災害対策本部を設置。職員らは被害状況の確認を急ぐなど情報収集に追われた。
■線路から避難
JRは、奈良線、和歌山線、桜井線が終日運行を見合わせ。大和路線の運行再開も午後10時以降にずれ込んだ。地震発生後からしばらく運行を見合わせていた近鉄は順次運行を再開し、午後5時40分ごろには全線でほぼダイヤ通りの運行に戻った。JR、近鉄とも、けが人はおらず、線路や車両の故障もなかった。
地震発生直後には、近鉄奈良発神戸三宮行きの快速急行電車(10両編成)が新大宮―大和西大寺間で緊急停車。乗客らは約1時間後、係員らに誘導されながら続々と降車し、線路上を歩いて避難した。奈良市の大学1年、毛利舜さん(18)は「こんなに大きな地震は生まれて初めて。電車の中で身動きが取れず、怖かった」とおびえた様子だった。
一方、近鉄奈良駅の改札口付近では、その場に呆然と立ち尽くす人や、会社や学校に連絡を取ろうとする通勤、通学客の姿が。奈良市の会社員、上松佑輔さん(37)は大阪市内の会社に向かうところだったといい、「電車はしばらく動かなそうなので、会社から連絡が来るまで駅で待ちます」と困惑の色を隠さなかった。
■文化財にも被害
文化財にも被害が相次いだ。県教委によると、東大寺(奈良市)戒壇院戒壇堂では、国宝・塑造四天王立像のうち多聞天立像の右手に載っていた木製宝塔が落下。また、王寺町の達磨寺境内では、同寺の縁起を記した八角の石柱である重要文化財・中興記石幢の宝珠が頂部から落ちた。
橿原市の県立橿原考古学研究所付属博物館では、展示中だった纒向遺跡(桜井市)出土の水鳥形木製品が、天井から落ちたパネルによって破損。奈良市の薬師寺では、土塀の瓦が3カ所にわたって落下した。
■おびえる観光客
早朝に突如発生した強い揺れは、奈良を訪問中の外国人観光客にも驚きと恐怖を与えた。
奈良市内のホテルで地震に遭遇したインドネシア出身のマリッサ・シャーさん(36)は、「どうしていいか分からず、ベッドにもう一度潜り込んだ。恐ろしい」と青ざめた。母国では2004年のスマトラ島沖地震以降、地震が頻発しており、「2年前に熊本で地震があったことは知っているが、私が旅行に来たときに起きるとは…」。
友人と興福寺を訪れていたオーストラリア人男性(26)は「ホテルのベッドから飛び起きて、2人で顔を見合わせたよ。自分たちの国では地震がないので初めての経験」と目を丸くした。
■各地で救出劇も
また、奈良市、大和郡山市、田原本町では、エレベーターに閉じ込められる事案が計7件発生。JR郡山駅構内では、揺れを検知したエレベーターが安全確保のため、1階と2階の間で緊急停止し、30代と50代の男性が閉じ込められた。
元大和郡山市議の北門勇気さん(37)は、駅での演説を終えて帰宅する途中、エレベーターに閉じ込められた。約1時間40分後、救助隊によって2階から無事に救出され「結構揺れて、いきなりガタンと止まった。早く助けていただいたので大丈夫」とホッとした表情を見せた。