来たれ消防団、求められる若者 全国平均に遠く及ばない奈良の事情
南海トラフ巨大地震などの大規模自然災害に備え、減少の一途をたどる消防団員を確保する取り組みが県内で始まっている。県が4月から学生の加入を呼びかけるほか、生駒市の一部店舗では消防団員に対する割引サービスなどの特典を導入。県の担当者は「県内では学生の数が少なく、危機感がある。加入してもらえるよう積極的に働きかけていきたい」としている。
県内の消防団員数は8368人(昨年4月1日現在)。昭和40年には1万5400人いたが、平成11年に1万人を割り込み、年々減少している。このうち学生(大学生、大学院生、専門学校生)はわずか9人。47都道府県の平均に当たる97人には遠く及ばない。
そこで県は、県内にある全ての大学と短大、看護学校で学生の消防団加入を働きかける。啓発チラシを配布したり、ポスターを掲示したりするほか、学生が集まるオリエンテーションの場でPR。学生分団を作り、初年度は30人の加入を目指す。
奈良教育大や奈良女子大など8大学・短大は、大規模災害が発生した際の指定避難所に指定されている。学生は任務を限定した「機能別団員」として、避難所の運営や負傷者の応急手当てなどを担うという。
来月、関西大に入学する18歳の男性は昨年12月、人に貢献する活動をしたいと地元の橿原市消防団に入団。「入団してから、災害への当事者意識を持つようになった。消防団の活動には学生の若い力が必要。災害が発生したときには、若者ならではの元気さで被災者を勇気づけられるのでは」と語る。
消防団員として活動すれば証明書を交付する自治体もあり、就職活動の際に地域社会に貢献した実績をアピールできる。県消防救急課の担当者は「就活でPRできるので、学生にとってメリットがある。大学と協力し、防災に関心のある学生を見つけたい」と話す。
また、消防団の活動に関心を持ってもらおうと、生駒市では今月から「消防団応援の店」事業を展開。登録店で消防団員が専用のカードを提示すると、さまざまな購入特典を受けられる県内初の試みだ。飲食店やドッグスクールなど5つの店舗が登録済みで、さらに7店舗が申請中という。
生駒駅前の商業施設にある「陶磁館・イマジンハウス」も登録店の一つ。従業員の女性は「もっと加盟店が増え、消防団員の数も増えていってほしい」と期待を込めた。