旧遊廓建築の解体始まる 大和郡山市
かつて遊郭として栄えた大和郡山市洞泉寺町で、老朽化が進んだ旧遊郭建築4棟の取り壊しが6日に、始まった。最後の一般公開となった1、2日の見学会には多くの市民らが訪れ、町家風情を伝える歴史的建築物との別れを惜しんだ。
洞泉寺町はJR郡山駅と近鉄郡山駅の間に広がる城下町に位置する。市によると、一帯には江戸時代前期から遊廓が存在。明治10年に公認となり、大正14年には17の貸座敷で約200人の娼妓が働いたという。
昭和33年に売春防止法が施行されて廃業し、現存する建物は7棟のみに。市はこのうち大正13年に建てられた3階建て木造建築「旧川本家住宅」を買い取り、約8千万円を投じて耐震改修。平成30年にその歴史を後世に伝える「町家物語館」としてリニューアルした。
取り壊されるのは、浄慶寺の敷地内にある4棟。以前は住居や下宿として使われていたが、近年は空き家になっていた。同寺によると、傷みが激しいため解体し、跡地は駐車場などに利用する予定という。
一般公開されたのは、4棟の中で比較的状態の良い「旧山中楼」(木造3階建て)。前面がすべて格子になっているほか、欄間も意匠が凝らされている。玄関の壁面には、娼妓の写真を置いていたとみられる「飾り棚」が残されており、見学客らは内装を興味深そうに観察したり、熱心に写真を撮ったりしていた。
2日に見学した同市の神戸大海事科学部2年、吉村玲音さん(20)は「さまざまな部分に昔の面影が多く残っていると感じた。大和郡山市の貴重な遺産がなくなってしまうのは寂しい」と名残惜しんだ。