ジェネリック普及 協会けんぽ奈良支部が啓発に力
新薬より安価なジェネリック医薬品(後発薬)の普及を促進しようと、全国健康保険協会(協会けんぽ)奈良支部が独自に啓発ポスターを作成するなど力を入れている。同支部によると、県内のジェネリック医薬品の普及率は全国ワースト3位に低迷。背景には病院の院内処方率の高さがある。
全体に占めるジェネリック医薬品の使用割合を見ると、昨年10月診察分の全国平均は77・4%。奈良県は徳島県、高知県に次いで低い71・5%だった。国は今年9月時点における使用割合について80%を目標としているが、県にとっては厳しい数字となっている。
奈良支部が昨年11月に作成した啓発ポスターでは、ジェネリック医薬品を選ぶ人の割合(68・6%=平成30年3月時点の全国平均)が、スマートフォン(64・7%=総務省の同年調査)をしのいでいる実態を強調し、「安全性も品質も厚生労働省のお墨付き!」と積極的な使用を訴えている。協会けんぽに加入する事業所のうち、約2千社にポスターを配布したほか、奈良交通バスの車体ラッピング広告などでも啓発している。
ジェネリック医薬品の使用割合が県内で低いのはなぜか。県内の病院は、近くの薬局で薬を処方する「門前薬局」ではなく、院内で処方する割合が34・7%と全国で3番目に高く、とくに規模の大きな病院における院内処方の高さが背景にあるという。
奈良支部によると、ジェネリック医薬品を一定以上使用している医療機関には「後発医薬品使用体制加算」が、調剤薬局には「後発医薬品調剤体制加算」が付与される。ただ、ジェネリック医薬品を使用した場合、入院分には診療報酬が加算されるが、外来診療を院内処方する場合は加算されず、メリットが少ないという事情がある。
奈良支部は、各院内薬局にジェネリック医薬品の使用状況を伝え、患者へのジェネリック医薬品の推奨を呼びかけている。同支部の担当者は「高齢化が進んで国民医療費が年々上昇しており、医療費の適正化を進めないと保険料や税金を負担している加入者や国民に返ってくる。危機感を持ってお願いしている」と話している。