仏像の表情を数値化 奈良大にエンタメ新人賞 文化庁のメディア芸術祭
優れた映像作品などを表彰する文化庁の第23回メディア芸術祭で、奈良大(奈良市)の学生が手がけた仏像の表情を数値化するプロジェクトが、エンターテインメント部門新人賞を受賞した。「仏様の面相学といった趣き。仏像の魅力を今の時代ならではの方法で感じさせてくれる作品」と高評価を得た。
受賞したのは「Buddience 仏像の顏貌を科学する」と題し、平成29年から1年がかりで挑んだプロジェクト。文学部文化財学科などの学生20人が観光パンフレットや写真から仏像216体のデータを集め、米マイクロソフト社の人工知能(AI)を使った2種類のソフトで感情を測定。怒りや喜び、悲しみ、恐怖、驚きなど8つの指標で数値化した。
これまで主観的な印象で表現されてきた仏像の顔について、テクノロジーによる客観的なアプローチを通じて新たな解釈を提示。考察は造形の背景にも及んでおり、同大のウェブサイトで研究成果を公開している。
興福寺(奈良市)の国宝・阿修羅像について、当時大学院生だった小川陽子さん(25)は「人間の表情に非常に近く、正面よりも横からの顏が慈愛に満ちて感情豊か。無表情の仏像が多い中、多くの人を魅了する理由が科学的な考察から分かった」と話す。
サイトでは、スマートフォンやパソコンからアップロードした顔写真を数値化し、それぞれの感情に近い仏像をはじき出すユニークなサービスも。
プロジェクトを率いた関根俊一教授(仏教美術史)は「仏像は歴史的に価値がある文化財だが、山寺などでは檀家離れが進み、盗難も相次いでいる。今回の受賞は、仏像に興味を持ってもらうための大きな一歩になる」と喜んでいる。