「ナラ枯れ」被害深刻 矢田寺のミニ遍路道 「立ち入り控えて」
「あじさい寺」として親しまれている大和郡山市の矢田寺境内で、コナラやクヌギなどナラ類の樹木が枯れる「ナラ枯れ」被害が深刻化している。境内の裏山にある「ミニお遍路道」は7月から通行止めとなっているが、散歩コースとして市民にはなじみ深く、知らずに入ってくる人も。関係者は「倒木の危険があるので立ち入らないで」と呼びかけている。
ミニお遍路道は1周約3・5キロで、四国八十八カ寺の本尊を模した石仏が沿道に安置されている。大正時代に、四国を旅することができない病人や高齢者がご利益を得られるよう整備された。その後荒廃したが、地元の「矢田寺へんろみち保存会」が約10年かけて平成27年に再整備した。
だが近年、お遍路道でナラ枯れの被害が深刻化。山の中腹にある「雪蹊寺」では、弘法大師石像が倒木により倒壊した。同保存会の世話人、山下正樹さん(75)は「人の声や音で木が倒れる可能性もあるので危険。早く対処してほしい」と訴える。
保存会が7月16日に調査したところ、伐採する必要に迫られている木は51本に上り、うち36本がナラ枯れ被害を受けていた。お遍路道は同12日から立ち入り禁止となったが、近隣住民にとっては定番の散歩コースになっており、気にせず入ってくる人も少なくないという。
県森林整備課によると、県内ではこれまで、若草山周辺や生駒山系、矢田丘陵などを中心にナラ枯れの被害が確認されている。被害規模は29年には県内一帯で計約1万8200立方㍍にも及んだ。その後は、ナラ枯れを引き起こす昆虫「カシノナガキクイムシ」の駆除や対策が奏功するなどして減少傾向にあり、昨年は約2800立方㍍だった。
矢田寺の前川真澄住職は「秋の登山シーズンを迎えますが、安全のためにも遍路道に立ち入るのは差し控えてほしい」と警鐘を鳴らしている。