奈良市の「フクロウカフェ」月末で閉店、訪日客の回復見通せず
猛禽類のフクロウと触れあえる県内初の専門カフェとして6年前にオープンした奈良市橋本町の「わたわた」が、今月31日で閉店する。新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国制限が続き、外国人旅行客の回復に目途がたたないため。東京商工リサーチ奈良支店の担当者は「利用客のほとんどがインバウンド(訪日外国人客)だった店舗はいつ客足が戻るかわからず、休業判断もありうるだろう」と指摘している。(前原彩希)
わたわたは、興福寺に近い三条通り沿いのビルの2階にある。平成26年9月に法連町で開業し、観光客が多く訪れる現在の場所に移転。約20種類のフクロウ羽が、多くの来店客を癒してきた。同店の脇田和行代表(56)によると、客は約8割が外国人で、欧州や中国からの旅行者でにぎわった。
ところが、新型コロナの感染拡大を受け、観光客の流れがほぼストップ。緊急事態宣言が出されたこともあり、同店は4月20日から休業。6月に営業を再開したものの、6~7月は売り上げが前年同期の10分の1ほどに激減した。
「コロナの影響は思ったよりひどかった」と脇田さん。インバウンドが戻るまで、一時閉店することを決めた。
21羽のフクロウのうち半分ほどを、イヌやウサギなどの小動物を扱う近くの姉妹店「はなはな」に移転して、残りは脇田さんが飼い続けるという。
インバウンドが戻れば、フクロウカフェを復活させる考えで、脇田さんは「一旦閉め、また新しい形でリニューアルしたい。前向きに考えている」と話した。
「Go To トラベル」など政府の観光支援事業が始まったが、景気の先行きは楽観的な状況では決してない。三条通りでは、ホテルフジタ奈良が12月10日に営業を終了することを発表した。
東京商工リサーチが8月28日~9月8日、新型コロナについてのアンケートを企業に実施したところ、コロナの影響について、県内の企業では有効回答91社のうち71社(78・02%)が「影響が出ている(継続している)」と回答した。同社奈良支店の担当者はコロナによる影響の長期化を懸念し、「インバウンドが戻るまで休業するか、これまでと転換を図って国内観光客を取り込めるようにするかなど、模索が必要になるだろう」と話している。