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奈良墨職人、オンライン実演で児童の心奪う コロナ下で工夫


書道で使われる固形墨の国内シェア9割以上を占める「奈良墨」。墨を磨る機会の減少で斜陽化は止まらず、それに新型コロナウイルスも追い打ちをかけ、観光客による購買もめっきり減った。飛鳥時代に始まる墨作りの伝統が風前のともしびとなる中、「乗り越えるには墨のすばらしさを知ってもらうしかない」。若き墨作り職人が立ち上がった。コロナ下のため、オンラインを活用した発信を始めると、遠方の小学生の好奇心に火がついた。
 「墨の材料は、煤、膠、香料の3つしかありません。練り合わせると、こうして粘土のような生墨ができます」
 作業場でスマートフォンのカメラに向かって解説するのは、奈良市の墨工房「錦光園」の7代目墨匠、長野睦さん(43)。ビデオ会議システム「Zoom」を介した相手側は、横浜市立矢向小学校3年4組の児童たちだ。
 「錦光園は150年くらい前に墨づくりを始めました。奈良で一番古い古梅園という墨屋さんは約450年続いていますので、これでも新しい方です」
 「生墨を乾燥させて硬い墨になるまで、小さいもので1年、大きいもので2~3年かかります」
 丁寧に説明する長野さん。パソコンの画面に映る児童は、興味津々の様子だ。実演では、生墨をもみ込み、素早いスピードで丸める手業に歓声が。生墨がピカピカに黒光りする球体に変化すると「超きれいな砂だんご!」、木型にはめ込んで成型された生墨がペラーンと曲がると「うわ~コンニャクみたい」。児童らの楽しげな声が響いた。
 長野さんは6代目の父、墨延さんの元で墨に親しんで育ったが、就職したのは英国風パブチェーンを経営する東京の会社。店舗管理のマネジャーなどを務めていた。
 奈良墨をめぐる業界は厳しさが増すばかりだ。学校の授業で墨を磨る機会が減るにつれて墨屋は次々と廃業に追い込まれ、残るのは全国で9軒(うち8軒が奈良市に集中)だけ。墨延さんも自分の代での廃業を決めていたが、長野さんが4年前、退職し跡を継ぐ決意をした。「墨の魅力を伝える案内人となり、需要を増やす可能性を探ろう」。
 錦光園の収益は、生墨を手で握って自分だけの固形墨を作る「にぎり墨体験」や工房での墨の販売が半分強を占める。国内外の観光客が多く訪れていただけに、コロナ禍の影響は大きかった。
 どん底の6月、自宅に居ながらオンラインで奈良墨作りを体験してもらおうと考え、キットの開発に着手。試行錯誤を重ねながら半年の準備期間を経て、月中旬、ホームページでの告知にこぎ着けた。
 同じ頃、矢向小3年4組担任の小川央教諭(32)は、墨について教えてくれる講師を探していた。3年生から書写の授業が始まり、固形墨について子供たちに知ってもらいたいと思ったのが発端だ。
 そんなとき、長野さんのホームページを見つけ、講師を打診。オンラインの実演が11月27日に実現した。
 「墨についてネットで事前に調べたが、生墨の柔らかさや、職人の手で変身していく様子は想像を超えていて、子供たちは完全に心を奪われた」(小川さん)
 墨のとりこになった児童らは、長野さんに教えてもらった方法で煤を採取し、見よう見まねの生墨作りにも挑戦。年明けに再び、長野さんに墨作りを教えてもらう予定だ。
 長野さんは手応えを感じ、「矢向小の経験も糧にして教育現場にアプローチし、魅力を伝えていきたい」と意気込む。
 墨を磨って書く文化と産地の復興へ。来年は攻勢の年になりそうだ。

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