高裁も奈良市側に賠償請求 火葬場建設訴訟
奈良市が横井町の山林で建設中の火葬場「新斎苑」をめぐり、不当に高い価格で用地を買収したのは地方自治法に違反するとして、市民75人が市側に約1億6772万円の損害賠償を仲川げん市長らに請求するよう求めた住民訴訟の控訴審判決が2月日、大阪高裁であった。木納敏和裁判長は、市側に仲川市長と地権者2人に計約1億1643万円を請求するよう命じた。
判決によると、奈良市は産業廃棄物があると判明した同市内の土地を約1億6772万円で購入することで地権者と合意し、平成年に支払った。
木納裁判長は判決理由で、不動産鑑定によって示された用地の評価額は約5129万円であり、「(購入額は)著しく不均衡な価格で、市長に裁量権の逸脱があった」と指摘。1審奈良地裁判決では、仲川市長のみに損害賠償が命じられたが、地権者2人についても「市場では売却自体が困難な物件であると認識していた」と違法性を認めた。
一方、1審判決では、購入した土地は産業廃棄物の撤去費用として約1億4300万円が必要で「実質的に無価値」とし、全額請求するよう命じたが、木納裁判長は、購入額から評価額を差し引いた額の賠償義務があるとして減額した。
判決後、大阪市内で会見した原告団の山下真弁護士は「撤去費用を引いた価格で売るのが常識であり、今回の判決には不満が残る」と非難した。
新斎苑建設をめぐって市は平成30年2月に地権者と土地売買仮契約を結び、市議会も賛成多数で契約に同意。元大阪府職員で原告団代表の厚井弘志さんは「鑑定価格を基準に購入するのは役人や議員にとって常識中の常識。違法行為にお墨付きを与えた議会の責任も問われる」と話した。
判決について、仲川市長は「主張が認められず残念。判決内容を精査し、対応を検討する」とコメントした。