職域接種、県内の申請3件 接種「打ち手」確保が課題
荒井正吾知事は10日の定例会見で、新型コロナウイルスのワクチン接種を企業や大学で行う職域接種について、県内では会場単位で3件(9日現在)の申請があったと明らかにした。職域接種をめぐっては、接種の「打ち手」確保が課題となっているが、荒井知事は「一般市民がワクチンを打っていない段階で、県が医師を確保して派遣するわけにはいかない」として、支援には慎重な姿勢を示した。
県によると、申請したのは近鉄グループホールディングス(会場は奈良市)、DMG森精機(同大和郡山市)、森下組(同大淀町)の3社で、いずれも今月下旬から接種を開始する予定。荒井知事は「職域接種が進めば県内のワクチン接種率も伸びる」と期待を寄せる。
ただ、政府は職域接種について、同一会場で最低千人が2回接種を完了することなどを条件に挙げており、医療従事者も自前で確保する必要がある。大学の場合、多くが会場規模はクリアできるが、医療従事者の確保で明暗が分かれている。
奈良学園大(三郷町)では、学生と教職員約1900人を対象に常駐する産業医や付属学校の学校医による接種を想定。同大の担当者は「前向きに検討している」としている。
奈良女子大(奈良市)も実施を希望しているものの、学生と教職員約3400人への接種は常駐する産業医だけでは難しく、担当者は「医師や看護師をどう確保するかが課題」とする。今後、他の大学や市との協力を検討するが、「実施できるとしても遅くなりそうだ」としている。
また、荒井知事は、県内の希望者へのワクチン接種について11月までに完了させるため、大規模接種会場の設置などを検討する方針を示した。