俳句通じ「唯識」解説 興福寺・多川俊映寺務老院が刊行
「心の哲学」と言われる仏教思想の「唯識」について俳句などを通して解説する多川俊映・興福寺寺務老院の新著「俳句で学ぶ唯識 超入門 わが心の構造」が、春秋社から刊行された。難解とされる唯識に俳句から迫るという新たな試みによって説かれ、ユニークな入門書となっている。
唯識はあらゆることを心の問題としてとらえる思想で、古代インドの僧、無著と世親により大成。玄奘三蔵によって中国・唐にもたらされ、国内では法相宗の教義として興福寺や薬師寺で伝えられてきたが、仏教の基礎学問としても知られる。多川寺務老院はこうした唯識を分かりやすく紹介するためにこれまでに「唯識入門」(春秋社)を刊行し、さらに今回この姉妹編としてまとめた。
「俳句で学ぶ唯識」は「わが表面心」「わが深層心」「求める心」の3章で構成。松尾芭蕉や正岡子規、夏目漱石、加藤楸邨らの作品を通じて唯識が示す心の構造とその働きを説明する。芭蕉の俳句では、最上川の流れのイメージから心の深層領域である「阿頼耶識」について考えている。2千円(税別)。
多川寺務老院は「目に見えないものを名句を通じて説明したかった。俳句は日本人の感性が凝縮されているので、そうした作品のイメージをもとにすると唯識が理解しやすいのでは」と話している。