【鹿角抄】一人一人の声の先にあることは? 重症心身障害児を支える家族の思い
東大寺境内にある重症心身障害児者らの療育施設「東大寺福祉療育病院」と、患者と家族が一時滞在し休息する「奈良親子レスパイトハウス」の共催で先月末、「小児在宅医療とレスパイト」をテーマにしたセミナーが開かれた。
参加したのは、これまでに施設を利用した家族や、それに同行した医師ら。レスパイトハウスの利用は原則、患者の主治医が同行することになっており、セミナーではこうした医師から、「病院では見ることのできない父母のリラックスした顔を見られ、頑張ろうという気持ちになった」といった声が聞かれた。
他界した長男と約5年前に訪れたという父親は「世間一般と比べると病気を抱えた子供についてネガティブになりがちだが、シンプルにこの子と向き合っていこうという思いになれる機会だった」と明かした。また別の母親は、「息子が『か弱くて助けが必要』なだけの存在でなく、生きる力や勇気をプレゼントしてくれる存在になった」と生き生きと話していた。
医療の進歩で在宅で療養生活を送る子供が増える一方、子供やその家族を支える態勢はまだ不十分だ。この母親は「あっという間に命が奪われるようなわが子を守るため、24時間闘っている」と厳しい現状を話した。
レスパイトハウスをこれまでに利用した家族は約60組。同じ時代をともに生きる私たちにできることを広げていけるよう、一人一人が訴える「小さな声」を、発信していきたい。(山﨑成葉)
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