住んでいる土地は大丈夫か 県が大規模盛土造成地マップ公表
県は谷や傾斜地に大規模な盛り土をして建設された土地を示す「大規模盛土造成地マップ」を作成、公表を始めた。県のホームページで閲覧できるほか、独自に調査予定の奈良市を除く38市町村の窓口、県土木事務所でも公開している。
県は19年度と26年度に調査を実施。昭和22年ごろの古い地形図と現在の地形図を比較する方法で調べた結果、県内31市町村で計561カ所(約2500ヘクタール)の大規模盛土造成地を抽出した。生駒市が131カ所で最も多く、香芝市45カ所、宇陀市44カ所、平群町39カ所と続いた。大阪のベッドタウンとして大規模に開発された宅地に多いとみられる。
平成7年の阪神淡路大震災や16年の新潟県中越地震では、高い地下水位や軟らかい地盤のある古い盛土造成地で土砂崩落が発生。これを受け国土交通省では19年、各自治体に大規模な盛土造成地の把握や公表、危険地点の調査を求めてきた。
しかし、各自治体ではハザードマップ(災害予測地図)として扱われることへの懸念から公表を見送るところが多く、県によると今年7月時点での公表率は3割ほど。県も19年度にいったん調査を実施したものの公表は見送っていた。
今回、公表を決めた理由について県建築課は、「南海トラフ巨大地震など県内で想定される大地震に備え、住んでいる場所に関心を持ってもらい、防災意識を高めてほしい」と説明。日ごろから自宅の宅地で亀裂や水のしみ出しがないか点検し、異常がある場合は補修や補強をするよう呼び掛ける。
県は今後、561カ所のうち、土砂崩落や地滑りが起こる可能性があり、より詳細な調査が必要な場所を市町村と調整しながら決定。2次調査として地質や地下水調査などを実施し、危険性の高い場所では造成宅地防災区域の指定や崩落防止工事を実施する。
【キーワード】大規模盛土造成地
大地震の際に大きな被害が生じる可能性のある盛土造成地について、国は過去の被害事例から、2つのタイプに定義している。
1つは「谷埋め型」で、盛り土の面積が3千平方メートル以上で谷を埋め立てた造成地。もう1つは「腹付け型」(同)で、20度以上の急な斜面に5メートル以上の盛り土をした宅地となっている。
マップは県建築課のホームページ(http://www.pref.nara.jp/1686.htm)で閲覧可能。県内の土木事務所や市町村の窓口にも順次、マップを含むリーフレットを配る。詳しくは県建築課(電0742・27・7573)。
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