「清酒発祥の地」で日本遺産登録目指す 奈良市など
奈良市、御所市、生駒市、吉野町の3市1町は、日本酒をテーマとするストーリーを構築し、日本遺産への登録を目指すと発表した。「清酒発祥の地」を掲げる奈良市を中心に、日本酒にまつわる歴史と文化を広く発信し、観光誘致や産業の発展につなげたい考えだ。
日本遺産は、文化財の魅力や地域の歴史を盛り込んだストーリーごとに文化庁が認定する制度。地域振興を目的に平成27年度に創設され、今年度までに67件が認定されている。日本酒分野の認定はこれまで例がないが、同じく「清酒発祥の地」を打ち出す兵庫県伊丹市が近隣の4市(神戸市、西宮市、尼崎市、芦屋市)を巻き込み、来年度の認定を目指して準備を進めている。
室町~江戸時代の古文書には、奈良市の正暦寺を清酒発祥の地とする記述が存在。「菩提酛」と呼ばれる酒母(酵母を大量に含むアルコール発酵のもと)が室町時代に同寺で誕生し、これによる酒の仕込みが現在に至る酒造技術の原形になったとされる。菩提酛を使った清酒の醸造は長らく途絶えたが、平成8年に発足した「県菩提酛による清酒製造研究会」が伝統製法を復活させた。
「奈良まほろばソムリエの会」「奈良の食文化研究会」などのNPO法人を含む5団体が協力。奈良市は今後、県内の他市町村にも協力を呼びかける方針だ。
申請の受付期間は12月中旬~来年1月下旬。奈良市は連携する自治体や団体と協議を進め、急ピッチでストーリーを練っている。市の担当者は「奈良には歴史的背景という揺るぎない強みがある。そこをアピールしたい」と意気込む。伊丹市を中心とする阪神間の5市は強力な〝ライバル〟になりそうだが、「決して争うつもりはない。奈良は歴史、伊丹は清酒文化でそれぞれストーリーがあり、すみ分けができている」と話している。