鉄道で奈良の歴史を〝歩く〟 近鉄橿原線、吉野線
あをによし奈良の都は咲く花の薫(にほ)ふがごとく今盛りなり(万葉集巻第三328、岩波文庫版)。
大宰少弐(ださいのしょうに)という政府要職についた小野老朝臣(おののおゆあそみ)という人物が詠んだこの余りに有名な歌は、1300年前の華やいだ首都の雰囲気を今に伝えている。
「やっぱり都は華やかだなあ」という小野老の詠嘆を現代でも実感できるのが薬師寺だろう。金や丹(赤)に彩られた西塔。こんな寺院の塔が林立し、壮麗な伽藍(がらん)が並ぶ平城京は今の東京にも劣らない高層建築や巨大建築が並ぶ大都市だったのだ。
時代が下ると、歴史における奈良の露出度はぐんと減る。その中では、豊臣秀吉の弟、秀長が居城とした大和郡山城は、彼の地味ながらも安定した活躍と相まって久々に注目が集まる場所だ。
時代を逆転させよう。平城京の前、都は飛鳥地方にあった。天皇や渡来人が住み、外国使節が頻繁に行き来する国際都市だったこの地。しかしその後1400年間静かに時が流れ、いまや「日本の原風景」とまで称される都市近郊の典型的な里山となった。棚田が広がる風景の中に都の跡や古墳が点在する。特に稲穂が風に揺れるこの季節、電車で出かけ、一日ゆっくり散策するのに最高の土地に違いない。
歴史と自然に彩られた奈良。カメラを持って電車の撮影スポットを探して歩きながら、「日本人でよかった」と思った。(文化部長 藤浦淳)
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