会えるローカルヒーロー、「マスクドDJ雷音」ってだれ?
地域で活動する「ローカルヒーロー」が最近熱い。全国から100体が集結した「ローカルヒーロー祭」には2万人がつめかけ、今秋には映画も公開予定だ。そんな中、正体を公表している異色のヒーローが奈良にいる。特定の敵や目的はないが、変身頻度は週2回以上で「週1(放送)の仮面ライダー以上」とも。〝中身〟も含め「会えるヒーロー」として、地味ながら世界の子供たちを救う活動にも取り組んでいる。
正体はDJ兼喫茶店主
月曜朝。奈良市の県立朱雀高校の教壇で、黒いマスクと黒のコート姿の「マスクドDJ雷音(らいおん)」が、「自己PRのコツ」を高校生に伝授していた。
よく通る声。正体は、地元FMなどでDJを務めるジョータローさん(36)だ。奈良市で伝統的な町並みが残る「奈良町」で喫茶店「ならまち茶論白銀(さろんしろがね)」も経営している。
きっかけは、ラジオの企画で挑戦した平成25年の奈良マラソン。リスナーにプレゼントされたマスクを付けて10キロ完走、その後ラジオ内で変身していると、イベントに呼ばれた。これを機にマスクもバージョンアップ、今年1月には群馬の「ローカル悪役」から肩のパーツをプレゼントされ、さらに進化した。
雷音によると、マスクは「ライオニウム合金」という「謎の金属製」。製薬会社による秘密の超人化で生まれたスーツは「驚異的な軽さと強度、自動修復機能」を持つというが、ジョータローさんが暑いことは間違いない。「体重が6キロ落ちて体脂肪も減り、健康になりました」と笑った。
大図鑑、映画も公開予定
25年に「超ローカルヒーロー大図鑑」を出版した「水曜社」(東京)によると、ローカルヒーローは12年ごろから急増。秋田県の「超神ネイガー」や沖縄県の「琉神マブヤー」など、人気ヒーローの登場で拡大し、「500~600組はいるのでは」と担当者。昨年、映像制作会社「ヤツルギ魂」(東京)が千葉県で開いた「ローカルヒーロー祭」には全国から100体以上のヒーローが参加し、約2万人が詰めかけた。
だが、同社によるとローカルヒーローは「活動経費さえ賄えない」のが実情。そんなヒーローの存在意義を確認し、稼げる仕組みを作ろうと同社は昨年、映画「日本ローカルヒーロー大決戦」の制作を企画。撮影実費350万円を目標にクラウドファンディングを実施、501万円が集まった。
雷音を含む48ヒーローが悪と闘うアクションムービーで、役者としては素人のヒーローたちは日ごろの成果を発揮し、撮影は無事終了。11月7日に公開予定だ。興行収入の5%は世界の子供にポリオワクチンを送る活動に寄付予定で、ローカルヒーローは世界のためにも頑張っている。
気付けば「ヒーロー」に
奈良には公式グッズも販売されている「YAMATO超人ナライガー」というローカルヒーローもいて、雷音の知名度はまだ低い。それでも地元FMラジオなどでDJとして活動する毎週水・金曜の夜は変身してマイクに向かうし、ほかにヒーロー活動が入れば変身時間は結構長い。
実は当初、ジョータローさんに「ヒーロー」との意識はなかった。だが雷音の姿でイベントなどに出演するとヒーロー扱いされ、「模範的なふるまいをしよう」「地元のためになにかしよう」と思い始め、「気づけばヒーローになっていた」。高校生とゴミ拾いをすると「自分もヒーロー姿でゴミを拾いたい」との相談まで寄せられたという。
さまざまな活動を展開するローカルヒーローたち。地道でもその姿には想像以上の〝効果〟もありそうだ。(桑島浩任)
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