ナシの名産地で初の結婚式 純白の花びらが祝福
白くかれんなナシの花が咲き誇る大阿太高原(五條市、大淀町)の農園で先月、2組のカップルが結婚式を挙げた。新型コロナウイルスの感染拡大で挙式をあきらめていたが、純白の花びらが舞う関西有数のナシ名産地で祝福された。
農園は、「梨の花農園RIKAEN」。果実のおいしさだけでなく、春に咲くナシの花の魅力も知ってほしいと結婚式の開催を企画した。農園には、果樹園とは別に、ナシの花の鑑賞に特化した「花園」があり、代表の中元悦子さん(69)は「満開の季節に結婚式を開催することは、平成年のファーム開園以来の夢だった」と話す。
挙式した2組のうち、地元の大淀町に住む会社員の深尾弘太さん(27)と管理栄養士の彩さん(31)は、コロナで式はあきらめるつもりだったが、今年1月にファームを訪れて挙式を決めた。彩さんは「特産のナシの花に囲まれて結婚式ができるなんて夢のよう」と心ひかれ、式の段取りはとんとん拍子に決まったという。
当日は2組の式が同時に進行。普段は果実を積む車が色とりどりの風船で飾られ、その荷台に乗って花嫁2人が登場。ナシの花のブローチを胸にした新郎2人がその手を取り、幸せいっぱいの笑顔でナシの木の下を歩いて式の会場へ。
カメラを手にした親族や友人たちが見守り、笙や笛の雅楽が鳴り響く園内にはナシの白い花びらがはらはらと舞い落ち、牧歌的な雰囲気を演出していた。
大阪府阪南市の農業、西塚祥平さん(34)と真智子さん(34)は、農園が主催した「梨講座」を受講した縁で挙式。真智子さんは「気取らない式があこがれだった。何よりの喜びです」と満面の笑みを浮かべた。
果実用のナシは、つぼみのうちに摘花されるが、農園では実を付けない観賞用のマメナシを栽培。中元さんは「桜が散ったころに咲き始めるナシの花をめでる文化をこの地に根付かせるためにも、来年もここで挙式したいカップルを手助けしたい」と話す。