キトラ古墳壁画の十二支像 「巳」も残存の可能性
2021年09月1日 産経新聞奈良支局 最新ニュース

巳の壁画の存在が想定される漆喰片。丸い点が集中する中央部に絵の具に含まれる水銀が確認された(文化庁提供)
明日香村の国宝・キトラ古墳壁画(7世紀末~8世紀初め)の十二支像のうち、まだ確認できていない巳(ヘビ)の壁画が残っている可能性が高いことが分かった。東京都内で8月31日に開かれた文化庁の「古墳壁画の検討会」で報告された。
十二支像は古墳石室内部の四方の壁に3つずつ描かれたとみられている。卯(ウサギ)、未、酉の3つははげ落ちて失われているが、子(ネズミ)、丑、寅、戌、亥(イノシシ)、午の6つの壁画は残っており、はぎ取って保存している。辰と申は泥に覆われた漆喰片のX線調査などで存在の可能性が明らかになっている。
同庁施設に保管中で未調査の泥の付いた漆喰片(縦約40㌢、横約30㌢)を蛍光X線分析にかけたところ、破片の中央部の約10㌢四方に絵の具に含まれる水銀が多く分布していることが分かった。水銀朱で赤く色付けされた壁画の存在を示すとみられ、文化庁の担当者は「巳の壁画があることを示す大きな成果だ」としている。
文化庁は今後、辰と申についても蛍光X線分析で改めて調査し、壁画の存在を再確認することにしている。