「形態のすばらしさが魅力」 昆虫生態写真家、伊藤ふくおさん
今にも飛び出してきそうなバッタやコオロギ―。昆虫生態写真家の伊藤ふくおさん=橿原市=が撮影した昆虫の写真は、色鮮やかでまるで目の前で生きているよう。
40年以上にわたって昆虫の撮影を続けてきた。「自然の中で生き物の生や死を眺めていると、(自然を)守りたいという気持ちが芽生える」と話す。
三重県四日市市出身。カメラに興味があり、高校卒業後、大阪市内の写真店に就職。その後スタジオに所属し、カメラマンとして働いていたが、自身が撮影した昆虫の写真を出版社の編集者に見せたところ「これなら(本に)使える」と言われたことがきっかけで、20代後半にフリーの写真家に転向。主に生き物を撮るようになった。
自然の中で昆虫をうまく撮影するには、「驚かさないよう静かに近づき、虫が何をしているかわかるように撮るのがコツ」
平成18年に出版した「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」(北海道大学出版会)では生きたままの虫を薬剤で弱らせて丁寧に脚などを広げ、色や構造がよくわかるよう撮影した。「無駄のない形態のすばらしさが魅力」と語る。
昆虫観察を目的に自然の中を歩く観察会「ふくおと歩く」は月に1回のペースで開催し、約17年間続けてきた。現在はNPO法人の事業の一環で実施。子供から60代まで多くの虫好きが参加し、見つけた虫を思い思いに観察して楽しむ。
奈良の自然を守ることは、そこに住む生き物たちを守ることでもある。虫と自然への敬意を持ち続けながら、優しいまなざしで撮影を続けている。