江戸時代からの歴史に幕 奈良・豊住書店
2021年10月26日 産経新聞奈良支局 最新ニュース
奈良市東向北町の東向北商店街にある「豊住書店」が今月末で閉店する。歴史や考古学関連の本を多く取り扱う老舗で、常連客からは惜しむ声が寄せられている。
同店は、文化13(1816)年に伊賀上野(現・三重県伊賀市)で創業し、その後奈良に移ったとされる。店主だった豊住勝郎さんは高齢のため来年春の閉店を考えていたが、今年8月に死去。息子の勝輝さん(55)が東京での仕事を休み、営業を続けている。勝輝さんは「閉店は父の考えていたより半年ほど早くなるが、最後の親孝行です」と話す。
勝郎さんの目利きによる品ぞろえが自慢の同店。「歴史に強く、入手困難な本がある」と評判で、考古・歴史学の研究者も多く訪れた。閉店が決まり、追加発注をやめた店の棚は隙間が目立つが、「絶版」などの帯がついた歴史書も。10冊単位で購入する客もいるという。
「これまでお客さまに店を支えてもらった。本当にありがたい」。豊住さんは閉店日まで感謝の気持ちを胸に店頭に立つ。