「家族のように子供に寄り添う」 キッズスマイルサポート、西村安子さん
「ともに過ごした子供たちが将来、いつでも気軽に立ち寄れるホームにしたい」。虐待などさまざまな事情により、家庭で暮らせない子供たちを養育する奈良市のファミリーホーム「キッズスマイルサポート」を主宰する西村安子さん(62)はそう思いを語る。
JR桜井線が通るのどかな田園地帯にある自身の生家をリノベーションして今春、ホームを開設した。以来、両親が新型コロナウイルスに感染した子供の一時預かりも行ってきた。
親と暮らせない子供たちを支援することになったきっかけは35年前にさかのぼる。結婚を機に幼稚園教諭を辞し、同市の児童自立支援施設「県立精華学院」へ。夫婦住み込みで寮を管理した。
「学院の子供たちは非行や家庭内暴力(DV)など問題を抱え、ほとんどが家族の愛情に恵まれていなかった。寝食をともにすることで最初はとんがっていた子供が心を許してくれるようになり、家族のように過ごす時間の大切さに気づけた」
その後、大阪府松原市内で幼稚園教諭に復帰。そこで虐待やDVに悩む子供、母親を目の当たりにし、ファミリーホーム運営を考えるようになった。
59歳で幼稚園を退職して準備を進め、ホーム開設にこぎつけた。現在は幼稚園長の経験がある姉やスタッフとともに運営にあたる。一時預かりしている中高生たちと家庭菜園を楽しんだり、夕飯を作ったり。「子供たちの気持ちに寄り添う」ことを何より大切にしている。
月に2度は菜園で採れた食材を生かし、地域の子供らに食事を提供する「子ども食堂」も開いている。来年度からは自閉症など発達障害の子供たちの支援として「放課後デイサービス」も行うという。
「今は第2の人生。人のため、子供たちのためにと言いつつ、結局は子供と触れ合いたい私のためかもしれない」。そんな理事長の笑顔を子供たちは忘れないに違いない。