「迫りくる鉄塔の山夏休み」 生駒の句、最優秀に岡崎さん
2021年12月20日 産経新聞奈良支局 最新ニュース

最優秀句に選ばれた岡崎由加さんと息子の創一君(手前)、優秀句に選ばれた(後方右から)谷村圭子さん、久保昌子さん、木戸ミサさん、生駒市の小紫雅史市長=同市役所
生駒市が市制50周年を記念して「生駒の心を詠もう!」と募集した俳句の最優秀句が、岡崎由加さん(41)の「迫りくる鉄塔の山夏休み」に決まった。選者はテレビ番組で著名人の俳句を批評して人気を博している俳人の夏井いつきさん。最優秀句1句と優秀句3句の作者に小紫雅史市長から表彰状が授与された。
夏井さんから出されたテーマは「これまでの50年、これからの50年」で116句の応募があった。
最優秀句の作者、岡崎さんは市北部在住。新型コロナウイルスの影響で閉塞感が漂う中、市内で子供のラグビー教室体験があると知り、息子の創一君(8)を連れて夫が運転する車で会場に向かったときのことを詠んだ。
途中、車窓いっぱいに飛び込んできたのが「緑のモンスター」のような生駒山。そのとき、創一君が「ちくちく山」と呼んでいたのは立ち並ぶ鉄塔を表現していたのだと分かったという。
岡崎さんは「夏井先生はテレビで映像が残るようにと話しておられたので、それを意識しました」と笑顔。夏井さんは選評で「ずんずんと近づいてくる山を一心に凝視しているのでしょう。夏休みにご家族で生駒山を訪れたときの光景が見えてきます」とコメントした。
優秀句は「図書館員のお薦め本や冬ぬくし」「山笑ふ暗峠てふ難所」「いわし雲生駒山麓風呂は薪」の3句。
「図書館員の-」の作者、木戸ミサさん(55)は、地元の生駒市図書館でお薦めの本を手紙でたずねると、図書館員10人からそれぞれ丁寧な手書きの手紙が返ってきたときの感動を句にした。
コロナ禍で図書館員による対面での本の紹介ができなくなり、同館が昨年5月に独自に始めた文通事業で、西野貴子館長は「手紙を大切に思ってくれていたことが俳句から伝わり、うれしかった」と話した。
「山笑ふ-」は、久保昌子さん(77)がハイキングに参加し苦労しながら登った生駒山の春を詠んだ。「いわし雲-」は、昔ながらの生活を送る谷村圭子さん(78)がふとした実景をとらえた。
市は掲載辞退5句を除く111句を掲載した記念句集「生駒の心を詠もう!」を800冊発刊。市人権施策課で無料配布している(1人1冊。なくなり次第終了)。