手話でも観光案内を 大和郡山市のガイド養成講座
2021年12月21日 産経新聞奈良支局 最新ニュース

観光ガイド養成講座で説明を受ける山中輝章さん(左)と永井一江さん(中央)=大和郡山市
大和郡山市で手話が使える観光ボランティアガイドの育成が進んでいる。9月から始まった同市観光協会などによる養成講座に初めて聴覚障害者2人が参加。郡山城の城下町としての歴史や文化財、金魚養殖などについて学び、ガイドに必要な知識を習得する。来年には活動を始められる見通しだ。
市観光ボランティアガイドは平成8年にスタートし、現在は約30人が登録している。3年に1度養成講座の受講者を募集。市職員やベテランガイドが講師を務め、郡山城跡や城下町などでの現地研修も実施している。
今回10期生として参加しているのは11人。このうち会社員、山中照章さん(56)と、県聴覚障害者支援センター職員の永井一江さん(56)=いずれも同市在住=の2人は聴覚障害があり、手話通訳ができる観光ガイドを目指している。
郡山城跡での現地研修では、ベテランガイドの楠本利子さん(72)が案内のポイントなどを説明。山中さんと永井さんの横には市社会福祉協議会の手話通訳者が付き添った。
楠本さんは、口元が見えるフェースシールドを着用し、「しゃべる速度も普段よりゆっくりとし、分かりやすいように心がけた」と話していた。
中学生のときから歴史が好きで、戦国大名や江戸時代の年表をみて心が躍ったという山中さんは、「住んでいるだけでは知らない歴史も多く、興味が尽きない。同じ障害を持つ人に、郡山の魅力を存分に伝えられるように勉強を重ねたい」と意気込む。
永井さんは、約3年前に群馬県を訪れた際、富岡製糸場で聴覚障害者のガイドから説明を受けて感動。「わかりやすく魅力的で、自分もやってみたいと思った」と話す。
同市は平成27年3月、県内初の「手話に関する基本条例」を制定。手話への理解を深めてもらう取り組みを強化しており、約30人の観光ボランティアガイドに向けても手話教室を開講している。