文化財守る「選定保存技術保持者」に認定、北村繁さん
文化財保存の技能を持つ「選定保存技術保持者」に昨秋認定された奈良市の漆工芸家、北村繁さん(50)。「この仕事を続ける気持ちがさらに強くなった。経験を積み重ね、次の代につながる形をつくっていきたい」と意欲を語る。
北村家は4代にわたり漆工の技術を継承し、正倉院や社寺の宝物の修理、復元模造品の製作に従事。今回、貝殻を使う装飾技法である螺鈿の人間国宝で父の昭斎さん(84)から引き継ぐ形で認定を受けた。
子供のころから動物や魚などが好きで、生き物に関わる仕事に就くことを目指した時期もあったというが、大阪芸術大学に進んで金工の製作技術を習得。卒業後、昭斎さんの助手として、この道へと進んだ。
「正倉院や春日大社の宝物が身近にある環境。中でも漆工品は金属や貝殻を用いた表現があり、華やかで、実に奥深い」と語る。
慎重を要する作業は常に試行錯誤。その頼りとなるのは何より自身の経験だ。最近の仕事である鹿島神宮(茨城県)の国宝「黒漆平文大刀拵」修理も「取り扱い方が難しかったが、技術的に興味深く、やりがいがあった」と言う。
文化財を守っていく上で「材料や道具の保存について関係者と連携することが大事」とも指摘。「伝統を重んじつつ今の時代にできるより良い修理をし、若い人も育つように支援していきたい」と語る。