子供の安全見守り23年 香芝市の山下正美さん
県道「中和幹線」が通る住宅街にある香芝市立真美ケ丘西小学校。朝夕、交差点前で児童たちを見守るボランティアの山下正美さん(83)の姿がある。蛍光色のベストを着て、手には誘導用の旗。活動を続けて23年となる。
「うつむいた元気のない児童を見ると、今朝家で何かあったのかなと思う。声をかけているうちにぽつりぽつりと事情を話してくれる子もいる」
遅刻した児童には学校まで付き添う。夕方は下校の時刻に合わせて自宅前で児童が帰っていくのを見送り、一人一人に「気を付けて帰りや」と声をかける。
平成11年に60歳で大阪の商社を退職。夜遅くまで働くことが多かったため、住んでいる香芝市のことはよく知らなかった。退職を機に「地域の役に立ちたい」と1人で児童の見守り活動を始めた。
当初は保護者から不審な目を向けられることもあったという。しかし、次第に多くの人が協力するようになり、27年には自治会が中心となってボランティアグループを発足。今やメンバーは38人にまで増えた。
安全な環境づくりに努め、市などにも働きかけた。児童の列が車道にはみださないように歩道の植え込みが刈り込まれ、自動車の抜け道として使われる住宅街の通学路は30㌔ゾーンとなり、歩道レーンも敷かれた。そんな長年の活動が評価され今年3月末、メンバー18人に小学校から感謝状が贈られた。
「『長い間朝早くから立ってもらって、ありがとうございます』とお礼を言ってくれたり、大人になって顔を見せてくれたりすることが何よりうれしい」と顔をほころばす。
「信号変わるで。ぼやっとしてたらあかん、ちゃんと見て」と言葉がきつくなることもあるが、「おせっかいと言われても、地域みんなで子供を育てるのが大人としての責任。体が動く限り、見守り活動を続けたい」と意欲的だ。