古墳リアルに再現 クッションに フクトククニヲさん
前方後円墳や円墳などさまざまな古墳を模したクッションがずらり。そんなユニークな展示会が8月に県立図書情報館(奈良市)で開かれ、幅広い年齢層から人気を集めた。
制作しているのは奈良市の椅子張り職人、フクトククニヲさん(61)。「これまで作品を一堂に見てもらう機会がなかった。古墳クッションが生まれて10年となる今年、展示会を開くことができ、しかもたくさんの人に来てもらえてよかった」と喜ぶ。
披露したのは、全国の古墳をリアルに再現したシリーズの76点。県内では桜井市の箸墓古墳をはじめ奈良市のウワナベ古墳、富雄丸山古墳などの作品を並べた。墳丘に取り付いた「造り出し」部分など細部まで忠実に再現され、古墳の愛好家や若い女性も熱い視線を注ぐ。
49歳のとき、20年以上勤めた百貨店を早期退職。「自分が責任を持って取り組める仕事をしたかった」といい、専門学校で椅子の張り替え技術を習得。古墳愛好家との出会いをきっかけに古墳形の椅子を初めて作った。その後は試行錯誤しながらクッションを制作。8年前には京都府長岡京市の恵解山古墳を精巧に再現し、「リアル古墳クッションシリーズ」第1弾となった。
「古墳は面白そうだったので作り始めたが、若い女性からも『かわいい』と喜ばれ、広がった」という。「宇宙椅子」と名付けた工房で、一般的な椅子張り替えも行いながら制作。古墳の測量図や復元予想図などを参考に、型作りから生地の裁断、縫製まで一人で手がけている。
「古墳や歴史について難しいことを考えるのではなく、クッションがその入り口になってほしい」。今後はリアルなシリーズの作品を100点作ることを目指すとともに、奈良以外でも展示会を開きたいという。