新旧の「宝想華」咲く 薬師寺で特別公開
2023年05月19日 産経新聞奈良支局 最新ニュース
解体修理が完了した奈良市の国宝・薬師寺東塔の塔初層(1階)が特別公開されている。天井には当初は極彩色だった花文様が残り、修理では一部が鮮やかな復元品に代えられた。1300年を経て風化した文様とともに当初の華やかさをうかがうことができる。
天井に描かれているのは、想像上の美しい花を表した「宝相華(ほうそうげ)文」。濃淡で表す彩色技法「繧繝(うんげん)」が用いられている。現在は退色して確認しにくい部分が多いが、青や赤、緑系統などの色が虹のように鮮やかだったとみられる。
平成21年から約12年間行われた解体修理に伴い、大山明彦・奈良教育大学特任教授(絵画記録保存)が詳細に調査。取り外した部材の下から密閉された状態で残った文様の本来の色が現れた。大山特任教授らは復元した天井板などに丹念に調査を基に文様を描き、塔内に取り付けた。
大山特任教授は「当時の人の無駄のない表現が分かり、熟練した技術に感心した」と振り返り、「復元品があることで一般の人にも分かりやすくイメージしてもらえるし、後世に伝えていくこともできる」と語る。
特別公開は西塔でも行われており、令和6年1月15日まで。共通拝観券は大人1600円など。