紫菊芋の機能性、薬発祥の地から発信 「福角兄弟農園」代表、福角毅さん(50)
国内最古の「薬猟(くすりがり)」の地として日本書紀に記載され、製薬会社の創設者が輩出した宇陀市で、4年前から血糖値や腸内環境の改善効果が指摘される紫菊芋の栽培を始めた。「地域の特産にまで押し上げ、薬発祥の地・宇陀から国内外に魅力を発信したい」と話す。
宇陀の農家に生まれ育ったが、休みが少なく重労働である農業は嫌いだった。だが、大学卒業後に就職したファミリーレストランで効率化された業務に感動し、「この効率化を農業に導入すれば、十分ビジネスになるのでは」と考えるようになった。24歳で帰農し、4歳下の弟と農業を始めた。
兵庫・川西市のベテラン農家に教えを請いながら、煩雑な梱包作業などを伴わない業務加工用のミズナやコマツナなどの葉物野菜の出荷を主に手がけた。
紫菊芋を作り始めたのは、糖尿病を患っていた地域の高齢者の言葉がきっかけだ。「紫菊芋は健康にいいから、毎日食べたい」。調べてみると、食物繊維を多く含み、糖の吸収を抑えるなどの働きがあることが分かり、さっそく1㌶の農地でスタートした。
栽培はそつなくできたが、生活習慣病など持病がある人を除くと知られておらず、販路が見つからなかった。まずはおいしさを知ってもらうため、サラダや天ぷら、キムチなどの料理にして、直売イベントでアピールした。11月~翌年3月の収穫時期以外でも食べられるよう、昨年春には粉末状の商品を開発した。
「『体調良くなったよ、ありがとう』と喜んでもらえるのが励み」と手応えを話す。紫菊芋は高付加価値の農産物のため、栽培で生計が立つことを示せれば、農業を志す人が増えて休耕田の解消にもつながると考えている。「今後はさらに栽培面積を増やし、ゆくゆくは遊休農地解消の救世主にしていきたい」