東大寺・お水取り 新入(しんにゅう)の森川さんが「試別火(ころべっか)」入り
「お水取り」の名で知られ3月1日から本行が始まる東大寺二月堂(奈良市)の修二会で、空海寺(同)の徒弟、森川真雅さん(25)が新入として初めて籠る。15日には他の練行衆10人より5日早く東大寺戒壇院に設けられた別火坊で前行の「試別火」に入った。森川さんは「奈良時代から続く歴史あるお水取りに参籠でき、ありがたい」と話しており、3月15日の満行を目指す。
森川さんは華厳宗大本山・東大寺の末寺で弘法大師空海ゆかりの空海寺の住職、森川隆行さんの長男に生まれ、中学生のときに得度した。ニュージーランドの高校に留学し、さまざまな国の人らと交流する生活を送った後、龍谷大学国際学部へ進学。その後は真言宗の道場、高野山専修学院で修行し、昨年4月から空海寺とともに二月堂で勤務している。
高野山で修行していたころには「言葉で表せない神秘体験」と思えることがあった。まだ暗い早朝、ろうそくの明かりの中で大日如来像を拝んでいたときだった。ふと、仏と一体になれたように感じた。
「『入我我入』といえるものなのかは分からないが、これが修行というもので、自分の歩むべき道だと思った」
修二会に向けては、昨年12月から声明を狹川普文長老から教わりながら稽古してきた。新入は3月3日の夜の勤行で「称揚」という特殊な勤行形式の声明を導く時導師を務めるしきたりとなっており、「大役なので緊張する」ともらすが、声明や作法を伝承する立場になることに喜びを感じるという。
今回の修二会は、ウクライナ侵攻などが続き、災害も相次ぐ中での勤行となる。「自分の周りの一人一人が安全に、幸せに暮らせることが世界平和にもつながると思うので、そうであるよう祈りたい」といった思いを胸に臨む。将来に向けては、「高野山には落語家のように話すのがうまい僧侶がいる。私もいろいろな話のネタを持つ味のある僧侶になりたい」と意欲的だ。